秋田内陸縦貫鉄道の阿仁マタギ駅に着くと、
チェーンソーアートのマタギが出迎え。
秋田の中でも、
この辺りはかなりの内陸の鄙びた地域で、
そんな日本の原風景的な、
懐かしいような、初めて見るような、
何にもないような、あるような、
やっぱり日本だなと。
マタギの里には、
マタギ小屋が復元されていて、
山に生きたマタギの、
山での活動の拠点。
この辺りの地名には「内」とつくものが多くて、
それは北海道のアイヌの人たちの由来なのだとか。
奥には祭壇。
手前には熊のはく製。
反対側には雪を征くかんじき。
ここまで足を延ばしたのは、
マタギの食事を味わうことと、
その山を見てみたかったから。
山菜に岩魚、
刺身は鱒、ナマズと湯葉と、
内陸秋田ならではの御馳走。
熊鍋の熊肉は臭みもなく、
赤身と脂身が分かれていて、
赤身はしっかりとした旨味、
脂はサラッとした印象でくどくない。
旨い。
山を生きて来た熊をいただいているんだなと。
陶板焼きの鹿は、
さらにあっさりとしている。
新鮮だから旨味が違う。
ここでしか飲めない、
どぶろくを楽しむ。
こんな素朴な酒を、
素朴な肴で呑む。
地元の酒は、「北秋田」。
ここは住所で言えば北秋田で、
以前の阿仁町は、
他の街と一緒に北秋田に統合されたんだって。
朝の阿仁の里山は、
波波と連なる山に囲まれて静かで。
今は若い人が出てしまって、
高齢化が進んでいるそうだけど、
それでもマタギはまだ、
マタギの生活もしていて山に入る。
今年の秋は山の実りが少ないから、
里に熊が降りてくるだろうと。
森吉山は、
マタギにとっては霊山で、
身内に不幸があれば、
その一年は山に入ることはないそうだ。
この辺りの人たちは、
里に熊が降りてきても、
悪さをしない限りは放っておくそうで、
熊が降りてくるのも当たり前と、
この自然の中で生きている。
いまでも山に入るマタギの方が、
僕が子供のころに住んだ山形県西置賜郡小国町のマタギは、
この地から移り住んだ人たちで、
富山の薬売りに動物の内臓を売るために、
南下した先の土地だったのだと教えてくれた。
日に数本の秋田内陸縦貫鉄道の、
1両編成の列車はワンマンでの運転で、
元の阿仁町を南北に走る。
ここから南下して、
角館に向かったのでした。